会社の種類や資本金の額、決算月、事業目的等設立したい会社をどのように設計したいのかを決めます。一定の事項については会社のルールブックである「定款」に記載することも法定されています(定款の絶対的記載事項)。最低限記載すべき事項について記載のない定款は無効となりますので、記載漏れの無いようにする意味でも事前にある程度決めて準備を進めましょう。
商号とは、会社法で用いられる用語で、会社の名称のことを意味します。商号は、会社を設立するときの定款認証や登記で必要となります。個人事業主の場合は、屋号という名称が区別して使われます。屋号で用いていた名称を商号に引き継ぐこともできます。
しかしながら、商号にしても屋号にしても、後々のトラブルなどを未然に防ぐために、以下のルールは予め理解した上で決めるようにすると良いでしょう。商号については、自由に決めることができますが、登記するためには、一定のルールを守る必要があります。知らずにルール違反の商号で定款認証をしてしまい、登記が認められず、やり直すことになってしまうことが無いようにしましょう。
商号に使用することができる文字は、漢字やローマ字、一定の符号など、一定の制限があります。以下に記載する文字だけを使用することができます。
住所がまったく同じところに、同じ名前の商号を登記することはできません。複数の会社が入っているビルなどで登記する場合には、事前に確認する必要があります。商号の調査は、インターネットや電話帳で調べることはできますが、正確ではないため、法務局で調べると良いでしょう。国税庁の法人番号公表サイトの検索ページに商号を入力して検索する方法がおすすめです。
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp
商号には株式会社や合同会社などの会社の種類を、前か後ろに入れる必要があります。「株式会社○○」という形で、前に株式会社が入っていることを前株(まえかぶ)、「○○株式会社」という形で、後ろに入っていることを後株(あとかぶ)と呼ぶこともあります。株式会社であるにも関わらず、合同会社という文字を含めるなど、真実に反してはいけません。また、「支店」や「部署」という会社の一部分を示す言葉は商号に含めることはできません。
銀行、保険、信用金庫などの特定の業種の場合は、その文字を商号に含める必要があります。一方で、これらの特定の業種で無い場合は、その文字を商号に含めることはできません。
犯罪を連想させるものなど、公序良俗に反する言葉を商号にすることはできません。
会社設立時には、いろいろな印鑑が必要になります。中でも、会社の実印は必ず作成しなければなりません。会社の印鑑の発注のタイミングは社名が正式に決まってからです。あまり早く作ってしまうと、のちのち変更する事情が発生した場合に、作った印鑑が無駄になってしまいます。印鑑はインターネット等でも早く安く購入できます(設立セットでおよそ1万円程度)。
1、会社の実印
・一般的に二重丸の内側に「代表取締役印」などと刻んであります。
・一般的に二重丸の外側に社名が刻んであります。
・大きさは、1㎝の正方形以上で3㎝の正方形に収まるものです。
※会社の実印は必ず法務局に登録します。
※形は丸が一般的ですが、四角形でも登録は可能です。
2、銀行印
・内枠に「銀行之印」などと刻まれているものが一般的です。
3、角印
・一般的に2㎝角くらいの大きさで会社名が刻まれています。
・領収証、請求書、納品書等の日々の業務に使用します。
4、ゴム印
・住所、会社名、代表者名、電話番号などが記載されています。
定款は会社のルールブックです。また株式会社においては公証人役場等で定款の認証が必要となります。定款を作成したら、認証を受けましょう。認証には印紙が不要となる電子定款認証というものもありますが、個人で進める場合には、機材の購入等を考えると紙での定款作成がおすすめです。
・定款3通
・発起人の印鑑証明書(発効後3か月以内)
・委任状(提案認証時に欠席する発起人のもの)
・収入印紙4万円(電子認証の場合は不要)
・公証人の定款認証手数料5万円
・発起人の実印
・実質的支配者となるべきものの申告書
その他、発起人に未成年者がいる、発起人が会社である場合は、別の書類の用意も必要となります。また、定款認証を受ける際は、公証人役場へ発起人全員で行く必要があります(ただし、委任状がある場合は行かなくてもよいです)。
定款認証に行けない発起人の委任状(例)
●電子定款認証を受ける主な手順
STEP1 文書作成ソフトを用いての定款作成
STEP2 アクロバットでPDF形式に変換
STEP3 公証人への連絡
STEP4 電子署名
STEP5 法務省オンライン申請システムにログイン
STEP6 嘱託情報を送信
STEP7 公証人役場へ行き、電子署名を付した電子データの交付を受ける
発起人は設立時発行株式の引受け後遅滞なく、つまり定款認証が終わり次第すぐに資本金の払い込みを行います。払い込むのは発起人が定めた金融機関の発起人個人名義の口座です。各発起人が振り込みます。この際出資者を明らかにするために各発起人の名前が記載されるようにするのが望ましいです。募集設立の場合は、銀行の株式払込金保管証明書が必要となりますが、発起設立の場合は、これに代えて振込がされた口座の通帳の写しまたは銀行の取引明細書に会社代表者の証明書を添付する方法がとれます。
※払い込む口座は新しい口座である必要はありませんが、個人の預金と区別するために専用の口座を開設することをお勧めいたします。
※押印する印鑑は会社の実印となります。
登記とは、法律で定められた一定の事項を帳簿や台帳に記載することをいいます。日本では一般的に法務局(登記所)に備える登記簿に記載すること、又は、その記載自体のことを指します。登記の種類には、不動産登記や船舶登記等もありますが、ここでは会社登記(商業登記および法人登記)についてご説明いたします。
登記の種類 | |
登記の種類 |
対象となるもの |
不動産登記 |
土地、建物 |
成年後見登記 |
人 |
債権譲渡登記 |
債権 |
動産登記 |
動産 |
船舶登記 |
船舶 |
全国の法務局は、以下のホームページで検索できます。
会社を設立するために必要な最低限の書類は以下の表のとおりです。全部まとめて法務局に提出します。
登記に必要な書類 | 通数 | 備 考 |
登記申請書 |
1通 |
|
別紙(登記すべき事項) |
1通 |
|
印鑑届書 |
1通 |
|
定款 |
1通 |
公証人の認証がされた定款の謄本(合同会社の場合は認証不要) |
発起人の決定書 |
1通 |
本店の所在場所及び払い込む金融機関を決める |
就任承諾書 |
各1通 |
設立時取締役、設立時監査役全員必要 |
選定書 |
1通 |
取締役会設置会社か設立時代表取締役を選ぶ場合に必要 |
設立時代表取締役の就任承諾書 |
1通 |
設立時代表取締役を選ぶ場合に必要 |
印鑑証明書 |
各1通 |
設立時取締役全員個人の印鑑証明書 |
本人確認証明書 |
各1通 |
住民票、運転免許証のコピー等 |
出資の払込みを証する証明書 |
1通 |
証明書を銀行通帳のコピー等 |
資本金の額の計上に関する証明書 |
1通 |
資本金の額が会社法及び会社会計規則の規定に従って計上されたことを証する書面 |
登記の申請場所は定められています。初めて会社設立をする人は「設立する会社の本店所在地を管轄する法務局」と覚えておくとよいでしょう。登記を申請する会社又はその他の法人の本店若しくは支店又は主たる事務所若しくは従たる事務所の所在地を管轄する登記所(法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所)が提出先となります。
なお、会社登記の申請は代表取締役が行うことが原則です。ただし、登記の専門家である司法書士は代行することができます。申請方法は、大きく分けると以下の3つの方法があります。法務局で、事前に書類をチェックしてもらえることもあるため、自身で手続きをする場合には、提出前に申請書類をチェックしてもらうと良いでしょう。
①オンラインで提出する(別途書面を持参または郵送にて管轄の登記所へ提出する必要がある)。
②電磁的記録媒体(CD-R,FD等)に記録し郵送もしくは持参する。
③申請書に直接記載し郵送もしくは持参する。
郵送による申請の場合、会社の設立日は申請書類が届いて受付をした日となります。
株式会社登記、合名会社登記、商号登記等さまざまな種類の登記があります。いずれの登記にも登記自身の創設・閉鎖の原因やその日付を示す登記記録は必ずありますが、それ以外の登記事項の区分の仕方は各登記では異なっています。登記事項は会社法、商業登記法またはその他の法律等により登記すべき事項として定められています。例えば会社設立登記に必要な項目は下記の通りとなります。
登記申請書を提出するときは、登記免許税を納付する必要があります。会社設立時の主なものを下記の通りです。登記申請後にそのまま7~10日ほど連絡がなければ登記完了です。オンラインで提出した場合は手続終了をオンラインで確認することもできます。
株式会社 | 資本金額の1000分の7(15万円に満たない時は申請件数1件につき15万円) |
合名会社又は合資会社 | 申請件数1件につき6万円 |
合同会社 | 資本金額の1000分の7(6万円に満たない時は申請件数1件につき6万円) |
登記が完了したら、金融機関や諸手続きに必要になるので登記事項証明書を取得しましょう。登録事項の変更をする場合は、主たる事務所を管轄する法務局においては2週間以内に、その他の事務所を管轄する法務局においては3週間以内に変更の登記をしなければいけません。ただし資産の総額の変更のみ事業年度終了後2ヶ月以内に変更の登記をすれば大丈夫です。
登記の完了により会社としての事業がはじまります。登記事項の変更があった場合100万以下の過料の制裁を受けることがあります。面倒かもしれませんが、最新の会社の情報を登記しておくことを忘れないようにしましょう。
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